長年連れ添った夫婦が離婚する場合(いわゆる熟年離婚の場合)、以下に述べます3点が特に重要と言えるでしょう。
(1)厚生年金の分割の導入について
まずは、平成19年の4月1日から、離婚をする際の財産分与として、婚姻期間中に収められた厚生年金部分についても分割を請求することができるようになったということがあげられます。
これまで、専業主婦の妻がサラリーマンの夫と離婚をした場合に、離婚した妻が老後に受け取ることが出来るのは国民年金だけでした。しかし、平成19年の4月1日からは、夫が婚姻期間中に収めた上乗せ部分の年金である厚生年金の部分について、妻に分割が認められるようになりましたので、いわゆる熟年離婚で夫と別れる妻の老後の生活も安定しやすいと言えるでしょう。
(2)退職金について
裁判例の中には、離婚成立から6年後に夫が定年退職を迎える予定である夫婦の離婚について、夫が受け取る退職金のうち婚姻期間に対応した額などを計算して財産分与の対象としたものをはじめとして、近年は、夫が近い将来に受け取る予定の退職金についても財産分与の対象とする判例が多くなってきています。この点においても、いわゆる熟年離婚で夫と別れる妻の老後の生活は安定しやすいと言えるでしょう。
(3)財産分与の対象となる財産が多額であることが多いこと
長年連れ添った夫婦が離婚する場合(いわゆる熟年離婚の場合)は、夫婦がそれまでに築き上げてきた財産自体がそれなりに多額となっていることが多く、財産分与の対象となる財産自体が高額になっていることが多いことも特徴のひとつと言えるでしょう。
例えば、持ち家がある場合は、すでに住宅ローンの残高もかなり減っている場合も多く、そのような場合は、その不動産の市場価額そのものに近い額が財産分与の基礎として考慮されることになるでしょう。
このように、長年連れ添った夫婦が離婚する場合(いわゆる熟年離婚の場合)は、財産分与が非常に重要となってきますから、離婚届に判を押す前に、財産分与についてじっくりと話し合いを行い、合意が出来た場合には、離婚協議書などで合意した内容を明確にしておくことが大切だと思います。
離婚の成立を急ぐあまり、財産分与について良く考えなかったなどということがないようにした方が良いと思います。
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